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内容紹介
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この本のテーマは《伝える》ことです。私たちは、この本で、数学的に正当な思考・数学的な事実を、どうすれば文章にして他者に伝えられるか、懸命に説明しています。ちょっとした言葉づかい、論理的な説明の順序、条件と命題の違いの意識、いろいろな文字の立場の理解・・・・・・きっと、読者の皆さんの考えを読み手に《伝える》ために、すぐ役立つはずです。(中略)数学の答案作りとは、自分と読み手のあいだに小さいながらも数学の世界を築く作業です(抽象的な言い方ですが、数学的に正しい主張とは、常に完結した、バランスの取れた小宇宙です)。自分の知性と読み手の知性、双方を信頼し、両者の思考をつなぎ、そこに確固たる数学的結論を創造する。この営みは、多くの中高生が考えているより、ずっとやりがいのあるものです。この本を手に取られたあなたが、この本を通じて答案作成の方法を知り、そのたのしみに触れていただけることを祈ります。それでは、《伝える》レッスンをはじめましょう! まえがきより
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目次
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■第1部 よい答案への第一歩
第1章 答案作成ことはじめ
第2章 答案を読んでもらうために
■第2部 答案での基礎的な表現
第3章 根拠を述べるための言葉遣い
第4章 等式を用いた計算の書き方
第5章 数式の位置づけの明示
■第3部 条件の言い換え
第6章 条件の扱い方
第7章 同値記号の使用について
■第4部 記述式答案の書き方・実践編
第8章 いろいろな証明の記述
第9章 条件の同値な言い換えの具体例
第10章 不等式と変数のとりうる値
第11章 軌跡・領域
第12章 対称性の利用
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編集担当者の声
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実は、この本は、他のどんな数学の参考書よりも効果があるかもしれないと思っています。「記述式答案の書き方」という書名で、実際そのような内容なのですが・・・。それはなぜなのか?
つまり、答案の書き方をきちんと説明するためには、数学の基本構造を解説せざるを得ません。それゆえ、数学そのものを深く深く学んでしまうという、普通の参考書とは全く次元が異なる本になってしまっているのです。
例えば、「根拠とは」というセクションがあったりします。その中の「熱がある。だから病院に行く。」と「熱があるならば病院へ行く。」の違いについて考えるところがあるのですが・・・。(本当に違うのかな?)
「なので」と「ならば」の違いなど、言葉づかいの解説は、数学の本質的な内容であることに気づかされ、いつの間にか、深い理解に到達してしまいます。
とにかく、編集者でさえ、読んだこともない内容が盛りだくさんなんです。(特に、同値記号の乱用と誤用の解説、分数式を含む恒等式の問題、軌跡の十分性の議論などは必読です。)
本書は高校生の皆さんだけではなく、数学のプロの方(理系の大学生、数学の先生)にも役立つのではないかと思っています。
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著者紹介
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﨑山 理史先生:東京大学大学院卒、開成中学校・高等学校教諭
松野 陽一郎先生:京都大学大学院卒、開成中学校・高等学校教諭