子どもたちの輝く個性を賞賛する。
創業者・赤尾好夫の想いを受け継ぐ、
全国学芸サイエンスコンクール。

森藤 麻衣子 / 総務

第65回 絵画部門
<中学生の部>金賞

第65回 ポスター部門
<中学生の部>金賞

小学生から高校生まで、
さらには教員や保護者にも、
響く広報活動を模索し続ける。

私は「全国学芸サイエンスコンクール」(以下、学コン)の広報を担当しています。全国の小学生・中学生・高校生に学コンのことを広く周知し、作品を募集することが大きなミッションです。そのため、校内に掲出していただくためのポスターを配布したり、新聞広告を出稿したり、プレスリリースを配信したりと、複数の媒体を組み合わせながら情報発信をしています。

ポスターなどの制作物をつくる際に気をつけているのは、端的なメッセージや目に留まるビジュアルを開発する一方で、幅広い世代の子どもたちそれぞれに伝わるように工夫すること。小学1年生と高校3年生では、関心ごとも知識も経験も異なりますし、募集している部門は理科の自由研究といったサイエンスジャンルから、絵画などのアート分野、作文などの文芸分野など多岐にわたります。また、子ども本人だけでなく、指導する先生や保護者の方々といった大人の皆さんにも共感してもらわなければなりません。

2022年の募集では「あなたの“大好きなこと” あなたが“夢中になっていること” その熱い気持ちを思いきり表現しませんか」というキャッチフレーズを採用し、背景には星空のビジュアルをデザインしました。子どもたちは日々、さまざまなことに興味を抱いたり感動したりしていると思います。例えば、きれいな星空を見たとき。それを詩や作文を書く題材にしてもよいし、絵画の題材にしてもよいし、天文を研究テーマにしてもよいし、環境について考えるきっかけにしてもよい。さまざまな文脈を読み取ってほしいという期待から「星空」を選択しています。

10万点を超す、好奇心と努力の結晶。
子どもたちのキラキラした
熱量に触れ、圧倒される。

コロナ禍の影響もあり多少の変動はありますが、この学コンには、最近10年間では毎年約10万点程度の作品をご応募いただいています。広報担当者としてはこの数字が第一の指標になりますが、私が心動かされるのは、ひとつひとつの作品の中身です。「こんなすごい絵や書がかけるんだ」「すごい努力をしたんだろうな」「こんなこと大人の私も知らなかった」と、驚いたり、感動したり、刺激を受けたり。子どもたちのキラキラした熱量が伝わってきて、毎回、圧倒されます。応募を締め切る頃には、もう、心が飽和状態になるほどで、学コンの存在自体が自分自身の学びにつながっていると感じます。

一次審査、二次審査、三次審査、最終審査という流れで作品の吟味をしてくださる審査委員の方々は、大学などで教壇に立たれていた先生や研究者、作家など各ジャンルのエキスパートの方々です。数々の学習参考書を世に送り出してきた旺文社ならではのネットワークだと自負していますが、「内閣総理大臣賞」「文部科学大臣賞」「環境大臣賞」といった官公庁のバックアップも大きな後ろ盾になっていると思います。第65回の内閣総理大臣賞に選ばれたのは山を描いた油絵で、受賞者は中学1年生の生徒さんでした。作品は見れば見るほど圧巻なのですが、「一旦完成と思って絵筆を置いたけれど、毎日山を眺めているとまだ何か違うと思い、山の生命に突き動かされるようにして山との対話の日々を経て完成させた」というコメントを聞いたときは、心が震えました。

受験対策や教科の勉強だけじゃない。
一人ひとりの好奇心や、興味や関心。
それも、旺文社の考える大事な「学び」。

学コンのジャンルや部門は、66年間の歴史のなかで変化し続けてきました。例えば50周年の機には、社会的な関心の高まりを受け、新たに「環境分野」を創設しています。パソコンやスマホの子どもたちへの普及も進んでおり、今後はプログラミングやデザインなど、デジタル分野の部門も検討を進めていく必要がありそうです。広報の視点で考えると、SNS等を活用した広報活動も大いにあり得ると思います。

一方で、変えてはいけないもの、受け継いでいくべきものもあります。「多様な子どもたちの存在を認め、個性を肯定し、努力を賞賛する総合的なコンクール」という理念は、今後も変わることなく引き継いでいきたいと思います。学コンの広報業務は、商品やサービスを紹介する広報とはまったく異なる視点が求められます。いわば、旺文社の志という形のないものを知ってもらう活動です。旺文社は受験の参考書の出版社と思われがちですが、受験対策や学校の教科だけが「学び」のフィールドではない。後回しにされやすく、数値化が難しい、けれど大切な一人ひとりの「個性」を大人が応援し続ける。その志をしっかりと世の中に発信する意義が、学コンにはあると私は信じています。

私は学コンを通じて、たくさんの感動をもらっています。小さなことにも心を動かし、気づきや学びを得る。そこからアイデアやひらめきを引き出す。これからも変わらず、感動する心を大事にしていきたいです。

私が愛用していた参考書

高校時代は能楽部に所属し、平家物語の武者や荒ぶる鬼神に扮して舞を舞い、小鼓を打ちながら青春時代を過ごしました。おかげで古文や歴史は大好きで得意だったのですが、とにかく英語が苦手で…。旺文社の書籍では『基礎英文法問題精講』にお世話になりました。「全然、基礎じゃない!」と思いながら、苦労して取り組んだ記憶があります(笑)。

いま、学んでいる皆さんへ

私は、「なんだろう?」と好奇心をもつことが、学びの出発点であり、学びのエネルギーだと思っています。「学ぶ」というと重たく感じるかもしれませんが、実は身近なところにたくさん転がっているんです。大事なのは、それに気づくこと。ちょっとでも気になること、心が動いたことがあれば、立ち止まって考えたり調べたりしてみてほしいと思います。たとえひとつひとつは小さくても、自分の感性に刺さったものを拾い集めていけば、いずれは大きな変化、成長へとつながるはず。そのプロセスこそが、「学び」なのかなと思います。学ぶ皆さんを、応援しています。

図解全訳古語辞典

全国学芸サイエンスコンクール

「全国学芸サイエンスコンクール」は、小・中学生、高校生を対象に旺文社が主催するコンクールで、2022年で第66回を迎えます。サイエンスジャンルには理科や社会科の自由研究など4部門、学芸ジャンルにはアート(絵画、書道)や文芸(小説、詩、読書感想文など)、環境(写真、ポスターなど)など8部門があり、毎年多くの子どもたちが渾身の作品を応募してくれます。その数は、約10万点にも上ります。

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