旺文社の顔ともいうべき
『英単語ターゲット1900』、8年ぶりの大改訂。
さらに受験生を応援するために何をすべきか。

荒川 昌代 / 編集

どこを改善し、どこを踏襲すべきか。
多くの支持を受けているロングセラーだからこそ、
慎重に、その魅力や課題を洗い出した。

2020年、『英単語ターゲット1900』が8年ぶりに大改訂されました。『ターゲット』シリーズは1984年の初版刊行以来、シリーズ累計2,100万部というモンスター級の発行部数を誇るなど、大学受験を目指す高校生の必携アイテムにまで育っています。もちろん旺文社にとっても看板商品。改訂をするにあたってどの部分を改善すべきか、どの部分を踏襲すべきか、私たち編集部でも随分と頭を悩ませることになりました。

『ターゲット』シリーズは1900、1400、1200と目標大学合格レベルに応じて収録語数とレベルに幅を持たせているのですが、過去12年分のセンター試験・共通テスト、国公立大学の2次試験、難関私立大学の入試などの膨大な入試問題を分析して、それを基に「入試に出る順」で単語を選定しています。また、単語を効率よく覚えられるよう「一語一義」主義に徹しているのも、学習者から支持を得てきた大きな要因でした。今回の改訂は5度目になるのですが、これまでの改訂を通じて紙面デザインも含め、相当にブラッシュアップされてきた経緯があります。正直、これ以上、手を加えるところは見当たらないように思えました。

「一語一義」のよさに加え、「使える単語力」のために
見直した例文、追加したアンダーライン。
参考になったのは、現場の先生たちの声。

そんな中、編集部で着目したのがコロケーションと呼ばれる、よく用いられる語の組合せで覚えられるという学習機能を強化することでした。「一語一義」でサクサク単語とその意味を覚えられることは『ターゲット』の大きな利点の1つですが、文の中でどのような形でよく使われるのかを知ることは、長文読解がメインの入試にはもちろん、スピーキングなど表現する際にも必ず役立つ知識と考え、例文はコロケーションを含むよう、すべて見直しました。またコロケーション部分にアンダーラインを追加することで、役立つフレーズをまるまる暗記してしまえるつくりにしました。例文に関しては、現場で指導している高校の先生の意見を伺い、できるだけ短く、わかりやすいものにしてあります。ほんのわずかな変化に思えるかもしれませんが、数カ月もの期間で検討しました。

もう一つ大きな議論になったのは、表紙デザインです。ご存知の方も多い、あの「犬」を、今後も継続して使用するかどうか。「もう少しオシャレなデザインにできるだろうか?」「猫がいい」「いや、鳥だ」「虫は?」などなど、実は内部ではいろいろな意見が飛び交いました。ただ、高校生の間では『ターゲット1900』を「犬の単語帳」「青色の単語帳」という言い方で紹介し合っているという情報もあり、「青色×犬」という財産は継承することになりました。そこからは、図書館で犬の写真集をかき集める日々(笑)。『ターゲット』シリーズではレベルごとに犬種を変えているので、1900には大型犬、1400には中型犬、1200には小型犬のように、それぞれ選び抜いて誕生したワンコたちです。

自分なりにカスタマイズしながら、
『ターゲット』を使いこなしている学習者がいる。
書籍が読者によって育てられていく喜び。

高校生向けの英語の参考書の他にも、社会や国語、小学生向けの参考書など、編集者としていくつものジャンルを手がける機会に恵まれていますが、中でも『ターゲット』シリーズの改訂に携わることができたことは誇りでもあります。実は2011年の改訂にも携わったので、2度も貴重な体験を味わったことになります。もちろんどの企画、どの本にも思い入れがあるので差をつけることはできませんが、『ターゲット』ならではのプレッシャーや達成感は特別なものだったと言えますね。

改訂版は出版後の反響も上々で、高校生の皆さんからはたくさんの声をいただいています。書籍の各ページを縦半分に折って意味を隠して使うとか、複数のマーカーでラインを引いて使うとか、覚えやすいようにカスタマイズしながら学んでくださっているようです。たくさんの方がいろいろな方法で活用されているのを耳にすると、編集者冥利に尽きると心から思いますね。これからも読者の皆さんに『ターゲット』を育ててもらいたいと思っています。

私が愛用していた参考書

高校で配られた『英熟語ターゲット1000』(当時は初版)を相当使い込んだのを覚えています。国公立大学を志望していたため入試には英作文が出題され、大変役立ちました。大学では英文学を専攻して、高校の教員免許を取得。思い返してみると、幼いころに近所の子どもたちを集めて、先生になりきってお手製のプリントをつくって授業ごっこをしていたこともあったので、「教育」「英語」にはずっと関心があったのだと思います。やがて旺文社に入社して『ターゲット』シリーズの担当者になるなんて思ってもみませんでしたが、著者の先生にお会いできたときには、とても嬉しかったですね。

いま、学んでいる皆さんへ

どの時代でも『ターゲット』を手にする方々の多くは、大学入試を1つの目標にしていると思いますが、英語は社会人になってからも使う機会が増えています。いつの日か、『ターゲット』で覚えた単語やコロケーションがコミュニケーションのツールの一部として生きてくることがきっとあるはずだと、信じています。とはいえ、まずは志望校合格。苦しい時期もあると思いますが、ぜひ『ターゲット』を使い込んで目標を達成してください!

『ターゲット』シリーズ

2020年、多くの大学受験生に支持されてきた『ターゲット』が、8年ぶりに全面改訂しました。「でる順」配列、「1つの単語に1つの意味」など、『ターゲット』ならではのよさはそのままに、例文の覚えやすさがパワーアップするなど、さらに進化しています。

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