私は講義の最終回をそう言って締めくくることがある。昨今の問答無用のテロや理不尽な侵略行為を目の当たりにすると、言葉の無力を感じざるを得ないが、でも、諦めてはいけない。やはり人間は言葉を武器に闘っていくよりほかない。言語という特別な才能を与えられた人間にはそれができるはずである。
人工知能や機械翻訳の長足の進歩により、外国語学習をとりまく状況は一変しつつある。しかし、自身で英語力を備えることの意義はいささかも変わらず、そのための伴走者として辞書が有効であることも変わらない。人工的に変換された試訳としての英語が本当に自分の意図に沿ったものなのかをモニターできる、いわば高次の英語のリテラシーが求められるし、それに、何よりも自ら語る生の言葉には熱があり力があり、それこそが強力な武器になるからである。
私たちは『レクシス英和辞典』(2002年)以来、その時々の読者のニーズやウォンツに応えるというより、不遜をお許しいただけるなら、むしろそれらを先取りする提案型の辞書作りをしてきたつもりである。LEXシリーズ――今般の改訂で上級英和として一層の進化を遂げた『オーレックス英和辞典』、高校生の英語学習に役立つ独自の工夫を凝らした中級版『コアレックス英和辞典』、和英対訳集からの脱却を目指した『オーレックス和英辞典』――が、武器となる英語力を養成したいと願う皆さんのお役に立つことができれば幸いである。