12.鎌倉時代に開立した新宗派には,救済の面においてどのような特徴があるか。
(本文第31問対応)
▶ 解答例・視点・ヒント
- 選択(せんちゃく)・専修(せんじゅ)・易行(いぎょう)が救済論の特徴である。それぞれを具体的に説明すればよい。
▶ 基本事項の整理
- 旧仏教では戒律を厳格に守ったり厳しい修行を重視していたのに対し,平安時代末期から鎌倉時代にかけて開かれた新宗派は,いずれも「念仏・題目・坐禅の中から行いやすい修行(=易行)を一つえらび(=選択),それに専念すればよい(=専修)」という内面的な信仰を重視した救済論をもっていたので,武士や庶民に受け入れられやすかった。旧仏教の側で独自の刷新・復興運動が起こったのは,新宗派のこのような新しい救済論に刺激を受けたからである。
▶ 補足・発展
- 奈良時代の仏教においては,国家全体を救えばその中で暮らす民衆一人一人も同時に救済したことになるという救済思想が底流していた。そのため聖武天皇は仏教の鎮護国家思想に帰依しながら,国分寺建立や大仏造立などの仏教政策を国家事業として推進した(=国家仏教の時代)。平安時代初期に流行し始めた密教では,どの人間にも仏性が備わっているという考えから,民衆一人一人を救えば最終的には国家全体が救済されたことになるという個人救済論が生まれた。そのため,現世利益と自己の安心立命を求める天皇・皇族・貴族に受け入れられ,鎮護国家のための加持祈禱が盛んに行われた(=貴族仏教の時代)。平安時代中期になると末法思想を背景に浄土教が流行しはじめ,仏による救済は庶民の手が届くところまで近づいた。そして鎌倉時代になると新宗派は「選択・専修・易行」という方法での民衆救済を提唱するようになり,仏教の庶民化が進んだ(=庶民仏教の時代)。