5.遣唐使が中止されたことにより,国内にはどのような影響があらわれたか。
(本文第15問対応)
▶ 解答例・視点・ヒント
- 従来取り入れてきた唐文化の消化・吸収の上に,日本の風土や日本人の感情に適合するような文化が生まれた。それは優美で繊細な洗練された貴族中心の文化で,文芸の面などで唐様(からよう)から和様への転換が進んだ。「唐様から和様への転換」という視点で考えればよい。
▶ 基本事項の整理
- 菅原道真は唐の国力の衰退,航海の危険などを理由に894年に遣唐使の中止を宇多天皇に建議した。遣唐使が中止となっても宋の商人が博多に来航して多くの文物をもたらし,貴族たちはそれを「唐物(からもの)」として珍重した。日本の商船の渡航は律によって禁じられていたが,巡礼を目的とする僧侶の中には渡航が認められ,宋商船に便乗して大陸に渡る者もあった。
▶ 補足・発展
- 書道では三筆のような従来の唐風能書家にかわって三跡(三蹟)と呼ばれる和風能書家が活躍し,絵画では唐絵(からえ)にかわって大和絵が描かれるようになった。文学の面では,仮名文字の発達によって和歌も詠まれるようになり,和歌は漢詩文学と並ぶ文芸的地位を得た。建築では大陸風の建築にかわり,檜皮葺(ひわだぶき)の屋根と白木柱をもつ寝殿造が日本風の様式として貴族の住居に取り入れられた。