古文の学習を始める高校生には
どんな古語辞典が適していますか?
語数の絞られている辞書。
用例に全訳がついている辞書。
読めばなんとなく分かるという点で英語などの外国語を学ぶのとは違いますが、語学の学習ですから、辞書は必需品ですね。収録語数の多い辞書だと一生ものですが、引こうとする語がすぐには見つからないのですね。この点、語数の絞られている辞書がよい。もう一つ。語を学ぶには、文の中に置いて見なければならない。どんな文脈でのどんな用法なのか。用例が大切なのですね。しかも、その用例に全訳が付いていれば、よくわかります。
旺文社全訳古語辞典の
一番の特長はなんですか?
絞られた収録語、徹底した逐語訳、
文法事項の網羅的な解説。
入門から入試まで、必要な語が絞られていること。訳が徹底した逐語訳であること。解釈に必要な文法事項がもれなく書かれていること。この三点でしょうか。訳は、必ずしも現代語として読みやすくはありません。古文にもどすことのできる現代語訳になっているからです。助詞・助動詞の訳などは徹底していますから、この訳に親しんでいると、いつの間にか、初めて見る古文であっても、正確に読み取る力がつきます。
旺文社全訳古語辞典は
どのように使えばよいのですか?
予習のときに
活用してください。
語学の学習は、予習と復習です。予習にじっくり時間をかけて、授業で確認をして、忘れないうちに、もう一度、書き込みのないまっさらの本文に目をとおす。この繰り返しなのですね。即効性のある語学学習なんて、この世の中に存在しないんです。「旺文社全訳古語辞典」は予習のときに活用してほしいですね。教科書教材の語や例文を優先して採択してある辞書ですから。
単語集とはどう使い分ければいいのですか。
単語集だけでは不十分ですか?
市販の単語集は実力のチェックに
使うにとどめる。
市販の単語集というものがありますが、これは辞書の代用になるものではありません。なぜなら各語について一部の語義しか載っておらず、また、文脈の中に語を置いて学ぶ機会が少ないからです。昨今の入試では単純に語意を問う問題が減っていますから、即効性を求めて市販の単語集を使っても、その場しのぎの知識に終わり十分に力をつけることはできません。ただし、自分の力のチェックにはなります。
なお、市販の単語集に頼らず、自ら単語帳を作ると自分の財産になります。単語帳の強みはそのときに学んでいる古文をもとに、自分で一字一字を書いて作ること。これを3年間続ければ、語彙力は入試に耐えられるものになります。そのとき一番の資料になるのが辞書です。辞書の中から単語帳に書き抜いた部分をマーカーで塗っておくと、ぱらぱらめくってみて、過去の自分に出会うことができます。
古語辞典はどのような点を
改訂するのですか?
入試や教科書の傾向に合わせて
収録内容を刷新します。
語の解釈を改めるなど、最新の研究成果を反映させることは言うまでもありませんが、もっと気をつかうのは、毎年行われる入試とほぼ10年に一度改訂される教科書です。読まれる文章には、はやりすたりがあります。収録語数が限られていますから、読まれる文章が変われば、語も変わることになります。あとは、口絵など、洋服を変えて気分を一新するような、見た目の改訂もしますね。
電子辞書も同じ内容ですが、
どちらで学習してもよいですか?
初学者には紙の方が
適しています。
知られていないようですが、電子辞書と紙の辞書は別のものです。語釈と用例などは同じですが、表とか囲み記事とかは電子辞書ですべてが見られるわけではありません。探す語がすぐに見られるという点では電子辞書のほうが優れていますが、残念なのは、見開きの2ページ分が見られないこととマーカーなどを使うことのできないことでしょうか。高いところから風景を見渡すように、並んだ語が目に飛び込むのも、意外な発見に結びつくことがあるのです。
1938(昭和13)年東京生まれ。東京学芸大学名誉教授。
1958(昭和33)年東京生まれ。東京学芸大学教授。
1964(昭和39)年東京生まれ。国学院大学教授。