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はじめに
本校は埼玉県川越市にある,日本では数少ない全寮制の中高一貫の私立校である。「英語に強い国際人の育成」という創立者・川島寛士先生の考えにのっとり,12人の専任英国人教員を擁した授業,全員参加による中学2年と高校1年の2度の英国英語研修,兄弟校との秀明3校英語スピーチコンテストなど,他に類を見ない独自のプログラムにより「聞く・話す・読む・書く」の4技能のバランスが取れた,実用的かつ受験にも対応できる英語力を身につけさせる英語教育を創立当初より実践している。本稿では中高6年間を通した英語教育における英検の活用について述べたい。
英検の取得目標と現状
本校は創立以来「日本では,英検が英語の4技能を正しく測り,公式な英語力の証明として誰もが知っている試験である」と考え,中学校卒業時までに英検3級取得,高校卒業時までに準2級または2級の取得を目標としている。ケンブリッジ英検にも力を入れ,希望する生徒に受験の機会を与えているが,英検に関しては全校生徒が2級を取得するまで毎回受験することが原則であり,上位クラスでは準1級に挑戦する生徒も多数いる。
英検3級取得については英語科を含め,すべての教員が指導するという教育方針により,中学校卒業までにほぼ100%達成できるようになった。今年は,1学期の段階で中学3年の81.1%が3級を,35%が準2級を取得している。高校では高校2年の77%が準2級を,31%が2級を取得している。
英検指導
本校では2002年度より英検プロジェクトが組まれ,全寮制の特徴を活かして英検指導は主に夜間学習の講座で行っている。講座の軸は過去問演習,リスニング対策,二次試験対策の3つである。
過去問演習講座は1年間を通して開講している。過去問を3回繰り返すことで完全に身につけさせる,という徹底学習を,英語科以外を含め教員全員で取り組ませている。まず週末の課題として英検の過去問題の問題用紙を3部配布する。1部目では問題を自力で解き,自己採点をする。1部目で間違えたところは2部目にチェックを入れ,提出する。その週の夜間学習では,問題の解説を受けた後で2部目のチェックのついた問題を再び学習する。そして翌週の週末には3部目を満点が取れるまで学習する。その得点記録は担任によって管理され,得点状況によっては放課後の居残り学習や個別指導が行われる。また,学年によっては『英単語ターゲット1400』,『同1900』(旺文社)の授業内テスト,『英検 Pass単熟語準1級』(旺文社)をホームルームでテストするなど,毎日の単語学習にも力を入れている。多読・速読力の向上のため,英字新聞の社説などを授業に取り入れているクラスもある。
英検実施日の2週間前からは放課後に無学年制の級別リスニング講座が毎日設けられ,本番さながらの条件でリスニングを練習する。リスニングは集中力に大きく左右されることから,問題に集中できるよう,問題形式に慣れさせる指導を行っている。専任英国人教員による少人数の授業によって研ぎ澄まされたリスニング力を存分に発揮できるため,本校生徒のリスニングの成績は,毎回日本英語検定協会発表の平均点よりも高くなっている。
英検受験後すぐに自己採点を行い,前回の合格点マイナス2点以上の者は必ず二次試験の面接対策講座を受講する。対象者は模擬面接を2度以上受験してから,実際の面接に臨まなくてはならない。この二次試験対策講座は夜間の英検講座の時間に英語科の教員全員で行っている。学年を設定して整理券を配り,その番号順に生徒を銀行の窓口形式で呼び出す。多いときは1日に100人程度の生徒が参加し,整理券を待つ生徒の列が5階の教室から1階玄関まで延びたこともあるほど生徒の意識は高い。その成果もあって,本校では二次試験で不合格になる生徒は本当に少ない。
英語学習の動機づけとしての英検
生徒にとって,英検は英国研修とならんで,英語学習の大きな動機づけとなっている。
本校では中学2年で2週間,高校1年で4週間の英国英語研修に出かける。生徒たちは学校で学んだ英語を実際にホームステイの家庭や街で使うことができる。初めて行く中2の英国研修の方が楽しいのではないかと教員は考えていたが,生徒は「中2の英国研修ももちろん楽しく,ホームステイで初めて英語が通じたときの喜びが帰国後の英語学習のモチベーションになることは間違いないが,高1の英国英語研修は中2で行ったときより2倍以上楽しい」とよく口にする。中2で「話そうと思ったことの半分も話せなかった。もっと勉強したい,話したい」と強く思い,高1でそれが達成できたときの感動はとてつもなく大きいようである。同行している私たち教員に「前回より英語で自分の言いたいことを伝えたり,質問ができるのは,中2から高1までの勉強で英語力が伸びたってことですよね」「ホストファミリーとよく話すから,ホームステイが前よりもっと楽しい」とうれしそうに話す生徒たちの成長は,教員にとって最も喜ばしいことである。
一方,英検に関しては中3の3級未取得者は,放課後や夜間に少人数クラスに分けられ,単語から始まる英検指導を受けなければならない。こう聞くと生徒はかなりプレッシャーを感じると考えられるかもしれない。しかし,目標を持たずに漠然と学習するより,生徒は英検という目標設定を通して自分の英語力の伸長を楽しんでいるように見える。2級を早々に取得した生徒は「次は準1級に挑戦する!」と意欲満々に宣言し,中3で3級を取得した生徒は満面の笑みで「やっと取れた! うれしい,また英語をやる気になったよ!」と話す。実際に英語を話し,自分の英語力の伸びが自分自身で見えたときに一番喜びを感じるのではないだろうか。
このように,英検の取得は英国研修と同様,自分の英語力の伸びを知る指標として,英語学習の大きな動機づけとなっているのである。
英国文化への造詣・アメリカ英語への反応
中学1年から英国英語にどっぷり漬かっている本校の生徒の発音はブリティッシュ・イングリッシュになっている。中1で習う助動詞 can の発音は特に顕著である。“Can you speak French?”に“No, I can't と発音し,アメリカ英語が主流の日本は,アメリカ英語に見られるrの巻き舌発音のない英語で答える本校生徒は,アメリカ英語が主流の日本では非常に珍しい。また,ホームステイやカレッジで口にする fish & chips,shepherd's pie を好きな食べ物に拳げるところなどは,ちょっとした英国通である。
しかし,生徒は中1のアルファベットの段階で Z の発音の違い( (米)と (英))から教えられているせいか,無意識のうちにアメリカ英語と英国英語の違いを理解している。本校の生徒は英検でもリスニング問題に非常に強いので,英国人教員の指導や英国研修の恩恵は受けこそすれ,アメリカ英語を習っていないことでの不利益は特にないようだ。
今後の課題など
本校では中学校から到達度に応じて文法用語などを用いて指導している。英語は言葉ではあるが,日本語と同じようにただ話すのではなく,読み書きをしっかりとできる英語力の養成を早い段階から行うことで,社会に出てから十分に通用する英語力を育成したいと考えている。
主にリスニング力による得点で英検を取得できた生徒の「読む・書く」力をどのように鍛えてバランスよく4技能を育てるか,英語力のある生徒が準1級を取るまでの指導を受験までにいかに効率よく終了させられるかの2点が本校英語科教員の課題である。生徒が努力すれば達成できる目標を与え,受験英語,英検英語,英会話の区別なく4技能すべてを鍛えてこそ有意義な英語力であると考え,今後も指導にあたりたい。
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